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イシュアとアクワイアラ
クレジットカード事業は、薄利多売のビジネスモデルのため、スケールメリットが効力を発揮します。
そのため、クレジットカード会社にとってカード発行業務と加盟店獲得業務は、言わば「車の両輪」であり、不可分な関係にあると言えます。
このページでは、クレジットカードビジネスをイシュア業務とアクワイアラ業務の観点から見ることで、双方の重要性を解説していきます。
また、イシュアとアクワイアラを語る上で忘れてはならない、ブランドホルダー(国際ブランド)との関係についても触れています。
イシュアとは

イシュア(issuer)とは、発行者・発行人などの意味を持つ言葉です。
クレジットカード業界では、クレジットカードの発行元という意味で用いられることが多く、カード発行会社のことを指すケースが一般的です。
イシュア(カード発行会社)は、国際ブランドから発行ライセンスを取得し、カード会員に対してクレジットカードを発行します。
ユーザーにとって、最も身近な存在がイシュアです。
イシュアの役割
イシュア(カード発行会社)には、国際ブランドに代わってクレジットカードの発行業務を行うことで、国際ブランドを普及させるという役割があります。
また、イシュアは、カード会員の獲得・管理、審査、カード発行などの業務を担っています。
このようなイシュアによる一連の業務のことをイシュアリング(イシュア業務、カード発行業務)と言います。
クレジットカード申し込み時の対応や、利用明細書の送付などを行う会社がイシュアです。
カード会員の獲得・管理
新規顧客の開拓は、ビジネスを行う上で最も重要になる部分です。
イシュアは、カード会員の獲得、管理を行っています。
銀行系カードの場合は、銀行の本店・支店や関連会社の各サービスセンター等で、申込みを受け付けています。
その他にも、カード会員の利用を増やすためのサービスの提供や、優良顧客に対する一連の対応業務を行っています。
例えば、クレジットカード利用時の特典やポイントの付加や、グレードの高いカードへのインビテーション(招待)などが、それに当ります。
カード会員の審査
クレジットカードは、無担保で信用を付与するため、利用者の信用調査は重要な業務となります。
イシュアでは、カード会社が開発した自動審査システムにより、申込者の属性を判定し利用限度額を決定します。
カード発行業務
イシュアという名前が示す通り、国際ブランド(VISAやMasterCardなど)からライセンスを取得し、カード会員に対してカード発行業務を行っています。
通常、クレジットカードは、申し込みから発行まで数日~数週間程度かかります。即日発行に対応しているカード会社は、決して多くはありません。
売上代金の支払い(お金の立て替え)
イシュアは、カード会員と加盟店管理会社の間に立って、売上代金の請求と支払いを行っています。
また、カード会員がクレジットカードを使用して商品の購入やサービスを利用した場合、カード会員に対して利用代金を請求します。
指定口座から自動引落された利用代金は、アクワイアラへ支払われます。
イシュアの業務フロー
① 会員の募集 | カード会社、または委託業者が会員獲得活動を展開。 |
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② 申込みの受付 | 銀行の店頭や百貨店、スーパーの専用コーナーなどで受付。 |
③ 信用調査 | 申込書の記入事項と共に、信用情報を取り寄せ調査を行う。 |
④ 審査 | 申込者が、カード会社の審査基準を満たしているかどうか判断する。 |
⑤ 契約と発行 | 申込者と契約を来ない、信用力に応じた限度額のクレジットカードを発行する。 |
イシュアとは逆に、ユーザーからその存在が見えにくいのがアクワイアラです。
アクワイアラとは

アクワイアラ(Acquirer)とは、取得者、獲得者などの意味を持つ言葉です。
クレジットカード業界では、加盟店開拓や管理などを行う加盟店契約会社のことを指します。
国際ブランドや銀行系クレジットカードが共同で設立した、加盟店獲得を専門業務としている会社がアクワイアラ業務を行っています。
この加盟店獲得を専門に行う会社は、90年代後半に相次いで設立されました。
また、アクワイアラが行う業務を外注化することで、業務の効率化を図ることを可能としています。
このようなアクワイアラが行う一連の業務のことをアクワイアリング(アクワイアラ業務、加盟店契約業務)と言います。
クレジットカード業界において、アクワイアラは、イシュアと並んで大きな役割を担っています。
アクワイアラの役割
アクワイアラが加盟店の獲得を行うのは、顧客の人気が高い店舗を加盟店化することで、クレジットカード会社の収益化を図ることが目的です。
アクワイアラは、主に加盟店の獲得・管理、審査、契約などの業務を行っています。
また、開拓した加盟店の毎月の売上データを受け取り、そのデータをイシュアに渡すという取次業務を行う場合もあります。
この場合、売上代金をイシュアから徴収して加盟店に入金されます。
このようにアクワイアラは、加盟店とイシュアの間を取り持ち、円滑な関係を構築するための役割も担っています。
カード会員のカード稼働率(利用頻度)を上げるためには、クレジットカードが使える店舗数を増やすことが重要になります。
そのため、アクワイアラの仕事が大きな意味を持つことになります。
日本発唯一の国際カードブランドである「JCB」は、その業務がライセンス供与のみに留まる「VISA」や「MasterCard」と違い、加盟店との契約を自社で担うシングルアクワイアリングという強みを有しています。
これにより、国内で最大級の加盟店ネットワーク網を構築しています。
加盟店の獲得・管理
加盟店の獲得は、クレジットカード会社にとってカード会員の獲得と同様に大きな意味合いを持つ業務です。
カード会員の獲得と加盟店の獲得は、カード会社の二大業務と言えます。
アクワイアラは、本来、加盟店が負担するクレジットカードの利用手数料の一部を得ることで収益化を行っています。
そのため、加盟店が増加すればするほど、利益の最大化が図れることになります。
加盟店の審査
加盟店募集の場合も、カード会員に対する場合と同様に、慎重な審査が必要とされます。
自社のブランドを損ねるような会社と加盟店契約を行うことは、信用力の低下に繋がるため、厳正な審査が行われます。
審査時には、会社の事業内容を厳しくチェックされます。
加盟店契約
厳正な審査の結果、加盟店契約先が選別されます。
その後、各種手数料の金額をアクワイアラとカード加盟店の両社で決定し、加盟店契約を結ぶことになります。
加盟店契約後も、定期的に店舗に訪れ、事業活動内容をチェックします。
アクワイアラの業務フロー
① 加盟店募集 | カード会社、または委託業者が加盟店獲得業務を展開。 提携カードの場合は、提携契約による。 |
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② 加盟店審査 | 加盟店の信用力や事業内容などを確認する。 契約後も定期的に審査を行う。 |
③ 加盟店契約 | 加盟店手数料や売上代金の支払い方法などを決定し、契約を結ぶ。 |
欧米においては、カード発行業務は銀行などの金融機関が担っているケースが多く、加盟店の開拓業務等は専門業者が行うケースが一般的です。
日本では、同一のクレジットカード会社が「イシュア」と「アクワイアラ」の両方を兼ねる場合が一般的です。
ブランドホルダー(国際ブランド)とは
ブランドホルダー(国際ブランド)とは、世界中で決済することが出来るシステムを提供する会社のことを指します。
国際ブランドが搭載されているクレジットカードであれば、世界中の店舗(カード加盟店)で利用することが可能となります。
カード加盟店は、この国際ブランドを利用できる店舗のことを言います。
逆に、国際ブランドに加盟していないお店では、クレジットカードを使用することは出来ません。
国際ブランドには、以下の7つのカードブランドがあります。
- VISA
- MasterCard
- JCB
- アメリカン・エキスプレス
- ダイナースクラブ
- 銀聯
- ディスカバーカード
世界シェアの双璧としてその名を誇る「VISA」や「MasterCard」は、自社でクレジットカードの発行を行っていません。決済機能のみを提供しており、ブランドライセンスの発行までに留まります。
日本発の国際ブランドである「JCB」は、ブランドライセンスの提供だけでなく、自社がカード発行会社としての役割を担っているため、国際ブランドであると共に、イシュアも兼ね備えています。
また、ステータスカードの代名詞的存在として知られる「アメリカン・エキスプレス」や「ダイナースクラブ」もブランドホルダーとイシュア業務を兼任しています。
ブランドホルダーの役割
ブランドホルダー(国際ブランド)は、イシュアに対してライセンス権利を提供することで、ブランドの拡大・強化を図っています。
その他にも、為替レートに応じて正確な決済を行っています。これにより、クレジットカードが1枚あれば世界中で買い物やサービスの利用を行うが出来ます。
また、クレジットカードの不正防止対策のため、様々なセキュリティ機能を導入し、カード会員に安心で安全な決済を保証しています。
国際ブランドの「VISA」や「MasterCard」のイシュアやアクワイアラになるためには、プリンシパルメンバーかアソシエイトメンバーのどちらかになる必要があります。
プリンシパルメンバー
プリンシパルメンバーとは、ブランドと直接契約し、ライセンスの供与を受けた会社のことを言います。
一般的には、本会員と呼ばれます。
アソシエイトメンバー
アソシエイトメンバーとは、プリンシパルメンバーを通じてライセンスの供与を受けた会社のことを言います。
本会員に対して、準会員と呼ばれます。
まとめ
クレジットカードは、イシュアとアクワイアラ、そして国際ブランドが、それぞれ緊密に連携することで成り立っています。
このようなクレジットカードビジネスの裏側を知ることは、私達利用者にとってもメリットがあります。
ちなみに、商品購入代金に応じて加盟店から、通常2.5%が各企業に分配されます。
その内訳は以下の通りです。
- イシュア … 1.5%
- アクワイアラ … 0.8%
- 国際ブランド … 0.2%
利益配分の内訳は、ブランドごとに異なりますが、基本的には上記のケースが一般的です。
ただし、キャッシングの場合は、イシュアが直接融資を行うケースが多いため、発生する金利手数料は全てイシュアが手にすることが出来ます。
国際ブランドとイシュアは、お手持ちのクレジットカードの券面で確認することが出来ます。
国際ブランドは、通常、カードの表面の右下に「VISA」や「MasterCard」、「JCB」などのロゴマークが付いています。
また、カードの裏面に連絡先(電話番号)共に記載されている会社名がイシュアです。
自分のクレジットカードの国際ブランドであれば、把握している方も多いかと思いますが、イシュアに関してはよく分からないという方は意外と多いのではないでしょうか?
改めて自分のカードを確認することで、ブランドとイシュアを把握しておきましょう。
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